防振りの劇中歌『Good Night』を耳コピしてみた
『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』(通称『防振り』)のアニメを観ていたら劇中歌の『Good Night』に一目惚れならぬ一聴惚れしてしまったので、N年ぶりに耳コピをしました。
防振りの劇中歌『Good Night』を耳コピしました
— さわみる (@sourmilk) 2020年6月6日
アニメを観ましょう。サリーちゃんかわいい pic.twitter.com/9GK7asr7V6
Twitterランドのたくさんの方にお世話になりながら完成させました。 本記事は得られた知見のまとめです。DTM脱入門くらいの人に役立つかも。
最初に総括
- 今回はラテン系のそこまで聞き慣れていないジャンルだったこともあり、テクいドラム中心に打ち込みにかなり難儀しました
- 最初から難しいのは承知で、曲愛だけで何とか乗りきるつもりだったものの、途中から若干だれてきて結局40時間ほど掛かってしまった
- 長い目でやっていくなら、もっと簡単な曲をテンポ良く耳コピしていった方が地力上げの効率は良いかも
- ギターなど基本的なパートの打ち込み技法も正直あやふやなので、手持ちの本などでざっとさらうと良さそう
- Logicの基本操作の復習も行うことで作業スピードの底上げを図りたい
- 私の音楽理論レベルは下記の程度ですが、高度にテクい曲でなければまあ何とかなるっぽいです
- 理論の知識や音感が足りないと思ってましたが、むしろ楽器の同定、打ち込み方、音の作り方(音源・エフェクト)の方が遙かに地力が足りていないことが分かりました。全体的に音がダサい。音源弄るの慣れてない
- せいぜいベロシティ弄ってヒューマナイズかけて、パート毎にオートメーションでボリューム弄ったくらい
- 音源は勘で適宜少しだけ弄った程度
コード解析アプリの活用
「最短で耳コピを完了する」という観点ではここに時間を割きすぎるのは賢明ではないと思いますが、私はどうしてもコードを解明したかったので注力いました。コード解析アプリは2つ試しましたが、ヤマハのChord Trackerが(主に7thの有無を正確に判定出来ているっぽい点において)比較的優秀でした。
もちろん完璧ではないので、ある程度自分で修正は必要です。そういう意味で「Diatonic Chordって何?」ってレベルだと流石にキツいです。ただ最終的には頭で考えず音色を実際に確認することもまた大事です。鳴らすと一発で違うって分かることもあるので。概してコード解析アプリは「それに依存する」のは危険で、あくまで音感の無い人が作業スピードを短縮する・答え合わせ用に使うのが良いのかなと思います。
とりあえずワンコーラス解析した上で誤りを検討・修正し、一通り納得がいったところでやっと打ち込みに入りました。理論を思い出すのもN年ぶりだったので、ここまでで多分5〜6時間くらい使ってます。
特に今回の題材の『Good Night』はこれでもかと繰り返されるF#sus4やF#(key of Aのとき、マイナー「ではなく」メジャーのVI)がおしゃれな明るさを演出するのに大きな役割を果たしていると感じました。またサビ前のC#7(III7)の上でフルートがE(#9)を鳴らしておりスケール的には恐らくAlteredかなと思うのですが、これまたこの曲を強く印象づける要素になっています。全体としてはIV-V-IIIm-VImの定番進行やIV-V-VIの繰り返しを基調としつつ、Aメロ後半に差し込まれるBbdim7やBメロのサビ直前に一瞬入るIII7(こちらはHarmonic minor P5 below)が曲を引き締めるスパイスになっています。
ベースのEQと低速再生(Varispeed)
EQで再生帯域を80〜1kHz程度に絞りました。倍音を聞け、というフォロワーさんの意見に従い上限は比較的上に設定しました。
多くの楽器が入り乱れてくると聞き分けが困難になりますが、Logicには再生速度を変更するVarispeedという機能があり、目立った音質劣化なく半分のBPMまで下げることが出来ます。これが無いとベースに限らず細かいフレーズの耳コピは相当に至難です。
ベースは音が低すぎて正確な音程が聴き取りにくいこともあります。打ち込んだ譜面をオクターブ上げて(Option + Shift + ↑)聴くと誤りに気付きやすくなります。これも地味に知っておくと便利。
一通り出来たら予め解析しておいたコード進行と照らし合わせ、誤りがないか確認しました。
ボーカル抽出
特にコーラスは音が小さく、「どうせ基本は3度下でしょ?」と思いつつも一応確認したい気持ちがありました。幸いiTunes Storeでカラオケ音源が販売されていたので、これを使ってボーカル抽出を行いました。 残念なことにMac OSX Catalinaに対応したAudacityが未リリースだったので、Logic上で作業しました。
1) Vo.入りとVo.無しの音源をピッタリ合わせる
- 合わせる→拡大→合わせる→拡大……を繰り返して最大倍率まで拡大した所まで調整出来ればズレを解消できます。
2) Vo.無し音源の位相を反転させる
- プラグインでUtility→Gainを選択し、『Phase Invert』のL, RともにONにするだけです。
3) 2つの音源の音量を一致させる
これで波形が打ち消し合い、差分としてのボーカルのみが抽出されます。
もちろん最近はカラオケ音源が無くてもボーカル抽出するツールが出回っていますが、やはりカラオケ音源を位相反転する方法の方が綺麗に抜けると思います(比較はしてないので知らん)。
パーカス
『Good Night』はドラムがややテクニカルでコピペがあまり通用しません。まずLPFを掛けてバスドラの位置を把握し、次にHPFを掛けて金物を、最後にタムやスネア用のEQプリセットをベースに音を判別しやすい位置にピークを持って来つつ皮物を地道に耳コピしていきました。 ラテン系の曲なのでボンゴやシェーカーが鳴っているのですが、シェーカーはCabasaなど似た音がラテンパーカッションには幾つか存在するようなので、正確にこの楽器だ! と同定するのは諦め、名前にこだわらず音色が似ている音源を使うことにしました。この辺りは妥協ポイントです。
M/SのMainを切る
非常に小さい音で鳴っているギターを素で聴き取るのは至難の業です。そんな時はEQでMain/SideのうちMainの音を切ってしまうと、隠れていた音が顔を出す場合があります(出さない場合もあるのでその時は諦めました)。
今後やること
理論よりも打ち込み技法や楽器、音源の弄り方、プラグインの使い方、DAWの作業効率化について知るのが重要そうだということが分かってきました。手元にあるこの辺りの本で基礎を固め直すと次回作以降の質・スピードともに向上しそうな気がします。
もっと踏み込んだ話をすると、プロの楽曲制作工程を解説つきで見られたら最高だと思っています。
昔から思ってるんだけど、プログラミングや作曲やイラスト制作なんかは、プロの作業風景の一部始終を録画して、それに丁寧な解説をつけた動画を作れば最強の教材になると思う。プロ品質のアウトプットというゴールを鮮明にイメージ出来るし、そのために必要十分な要素が何なのかも把握出来る
— さわみる (@sourmilk) 2020年6月3日
で、DTMに関してはまさにドンピシャな講座が既に出ています。流石に少しお値段が張るので、もう数曲耳コピ出来てDTMモチベが高い状態をある程度の期間維持していたら購入してみても良いかなと思っています。
冒頭で「簡単目の曲をこなした方が学習効率は良いかも」と書いておいてアレですが、それ以上に数十時間耳コピに捧げてもいいと思えるくらい好きな曲を耳コピすることが大事だとも思っています。ただ私が好きな曲はどれも耳コピには難儀しそうなので、頑張って慣れていくしかないかもと半ば諦めています。
退屈凌ぎに丁度良いだろうと思って始めた耳コピですが、退屈凌ぎどころが無限に時間が吸われて大変なことになりかけました。技術書を読むのと2足のわらじをいい感じにやっていきたいと思います(今のところ技術書の方は完全に停滞していますが……)。