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『CHASE!』/ 優木せつ菜(CV.楠木ともり)を耳コピしてみた

大分期間が空いてしまいましたが、耳コピ記事第3弾です*1

序:私が耳コピをする理由

※『CHASE!』の話だけ読みたい方はこの節は飛ばしてください。

私が耳コピする理由の6割は「作曲しないで作曲が上手くなりたいから」という大層捻くれた理由です。残り4割は「楽曲をあらゆる角度から鑑賞し尽くしたいから」です。

後者は分かると思うので、前者について述べます。作曲って難しいですよね。やることも知るべきことも無限にあります。イラスト制作なんかもそうだと思いますが、作曲は「素人でもプロが作った作品にしか普段接しない」点が大きく異なると思っています。素人でも頭の中ではプロレベルのサウンドが当たり前になっていて、でも実際作ると当然知識も経験もないのでひどくダサいものが出来上がる。これに耐えることが私は出来ないというか、絶対今の実力で納得行くものが出来ないと分かりきっているのになんで自ら飛び込んで嫌な思いするの? マゾなの? と思っちゃうのです。

7年以上クラシックギター1本で好きな曲をアレンジして投稿することを続けている友人が居るのですが、彼が1年ほど前にDTMを始めて以来、圧倒的な成長スピードでクオリティの高いオリジナル曲を作れるようになっていくのを見てきました。当たり前の話かもしれませんが、 「音楽的素養(音感やアレンジ力、曲の聴き込み量など)がある状態でDTMを始めれば、DTM特有の知識差分(例えば音作りやミキシングなど)を中心に学べば最初から良い曲が書ける」 ということを再認識しました。彼以外にも同じようなケースは見たことがあります。

少なくとも自分は理想の音楽が書けないと分かった状態で作曲するのが苦痛ですし、彼のアレンジ活動にあたる行為を通じて音楽的な地力を上げていく方に楽しみを見出すタイプです。耳コピは音楽を様々な角度から分析することができて面白いですし、SoundQuest音楽理論の解説サイト)をだらだら読むのも好きです。好きなことの方が集中が続くので単純に成長効率が良いです。

そもそも作曲って自分が良いと思うものを音楽というフォーマットに具現化する行為だと思っているので、良いと思うこと、楽しいと思うことをしっかり味わいながら取り組む姿勢が日常的に重要だと考えています。音楽に限らず日常のあらゆる場面で自分の感情がどう揺れ動いているかに敏感になることが創作の礎になるのだと思います。

彼の意見も伺ったところ、結論耳コピやバンドスコアの打ち込みは音楽的地力の底上げに有効そうだという話になりました。もちろんオリジナル曲を作ることでしか得られない力もどうしてもあります(簡単に言うと曲の構成力とか)。ただ耳コピをすることで作曲に必要な要素の大部分をカバーでき、かつ耳コピを楽しいと感じるのであれば、一旦耳コピに傾倒してそこで上げれる地力をある程度まで上げてしまってからオリジナルに挑戦した方が遥かにとっつきやすくなるのではないかと思います。

そういうわけで私の最終目標はオリジナルのアニソンやボカロみたいな曲を書けるようになることですが、今は耳コピ音楽理論の学習が楽しいのでそっちに傾倒しています。

自分でもかなり偏った思考だと思いますし、絶対正しいと言うつもりも毛頭ありません。こういう考えの人も居るのかくらいに思って頂ければと思います。

『CHASE!』基本情報

CHASE! / 優木せつ菜(楠木ともり

作詞:鈴木エレカ・JOE

作曲:鈴木エレカ・JOE

2018年, BPM170, Key of E / Db

youtu.be

選曲理由(アニメネタバレ有)

  • サビの「ミレシドシ」のメロが強烈すぎて頭から離れない。
    • この曲がアニメ1話の冒頭数分で流れるのヤバくないですか?

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あまりの強烈さにふっ飛ばされる筆者

  • アニメ10話で侑がこの曲をピアノで弾くシーンがあるが、3話の時に比べて上達しており、自分の輝ける場所を模索しつつ進んでいく姿が尊い
    • ピアノアレンジでサビ頭のメロを聴くとより泣き感が増す。私は泣いた。

楽曲背景

CVの楠木ともりさんは2018年ガンゲイル・オンラインのレン役で主役に抜擢、EDの『To See the Future』(この曲もめちゃくちゃ良い!)のボーカルも担当。同年虹ヶ咲学園の優木せつ菜役にも選ばれ、今冬アニメ放送中。

2020秋アニメ『魔王学院の不適合者』にもヒロインとして出演と同時にED『ハミダシモノ』(この曲も良いぞ)の歌唱を担当。

『CHASE!』はTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の劇中歌。1話冒頭で流れる他、侑が10話でピアノアレンジを披露している。

本人インタビューで以下のようにコメントしている。

『CHASE!』はせつ菜の葛藤の曲なので、必死さが出ても成り立つし、むしろそのほうがいい

gs.dengeki.com

楽曲解析

Intro〜間奏

Intro→間奏→(ここで転調)→Aメロ。E→Dbへの短3度下転調。

SoundQuestにも解説があるが(要無料会員登録)、IIIをVと見立て直し、V-VImの動きで転調を完了している。

soundquest.jp

間奏後半

E Major → Db Major

A  B G#
IV V III
     (Ab=V)

Aメロ

4つの循環コードを4回繰り返すだけのシンプル構成。

Db Major

Bbm Gb Ebm Ab
VIm IV IIm V

前半後半で楽曲全体が4ビート→8ビートに変化することで進行感が得られる。

Bメロ

Db Major → E Major

Gb Ab Bbm Db
IV V VIm I

Ebm  Fm   A   Gb   Ab
IIm  IIIm VIb IV   V
          (IV) (II) (III)

前半は問題なし。後半が難しい。

ラストが移調先のIIIでサビ頭のVImにP4上で接続するのは分かるが、移調元で出てくるVIbは何??

軽く調べた所Mixolydian音階(ロックでよく用いられる)と関係ありそうな雰囲気。

soundquest.jp

更に VIb に行ったと思ったら IV→V とDbのダイアトニックコードに戻ってくるにも関わらず移調が出来てるのも不思議。 これまた現段階の知識では解釈出来なかったので識者のご意見お待ちしております。勉強せねば。

サビ

E Major

走り出した! 思いは強くするよ
C#m A B E
VIm IV V I

悩んだら 君の手を握ろう
C#m A B E
VIm IV V I

なりたい自分を 我慢しないでいいよ
 A#m7(b5)  A B E
IV#m7(b5) IV V I

夢はいつかほら 輝き出すんだ!
F#m G#m C#m
IIm IIIm VIm
  • 前半はド直球なTonic→Sub dominant→Dominant→Tonicで攻めのコード進行。
  • ポイントは後半頭のIV#m7(b5)→IV。泣き感を出す定番進行(『ラプラスにのって』 等)
    • https://tanuki-guitar.com/ivm7-5-use
    • ルートが半音下がっているだけな点に注目
    • 力強い歌詞に合わせ、直球なdiatonic chordで占められる中でIV#m7(b5)が光る。
  • ラストの「ほら 輝き出すんだ!」はドミナント→マイナートニックに向かうP4上進行(通称強進行。TSDを循環する)で最も力強い。
    • 最後は便宜上IIm→IIIm→VImと「m」付きで表記しているが、実際にはギターはパワーコードを鳴らしているので短長のクオリティは無く、力強さが前面に押し出されている。

耳コピtips

Intro

最後、全体がクレッシェンドして間奏に入る。これはマスタートラックにGainを挿してオートメーションを書く形で実現した。Logicでマスタートラックを表示する方法はメニューバーから「トラック」→「マスタートラックを表示」。

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マスタートラックを表示

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マスタートラックのオートメーション

Aメロ〜Bメロ

ピアノとリードギターはEQで音をsideのみに絞ると顔を出してくるので積極的に活用する。

Aメロ前半のピアノ、delayが掛かっているのか実際に弾いてるのか境界が曖昧。ただよく聞くと部分的にしかdelayかかってなさそうだったので、基本弾いているものとして処理した方が楽と判断。独特の明るい響きはオクターブ奏法。

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ピアノのオクターブ奏法

ドラム、ベースはほぼ楽勝。ドラムはあまりコピペが使えないのと、BD/SDのゴーストノートに注意。ベースも少し聞き取りづらいので、ベースの音域だけEQで拾うようにするとやや楽。コーラスは基本3度上だがたまに外すのがアクセントになっている。

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ドラムのゴーストノート

Aメロ後半〜Bメロの右の歪んだギターは、ベースと音域が被っていてギリ存在が確認できる程度。EQ等でmidを切るとベースがかなり消えてくれることを利用し、残った低音を歪んだギターと仮定して処理したが、正直かなり苦しい。

サビ

Chorus

まさかのめちゃくちゃ苦労パート。EQでmidを削ってもChorusが浮かび上がってこない。普通に聞いた方が聞こえるが厳しい。頑張って聴くしかない。サビは基本下ハモりだが、9-12小節目だけ上でハモっている。3度下、4度下、6度下が入り乱れておりラストはオクターブ下で締め。

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サビコーラス

Gt

サビは概ねパワーコードか? と思ったが、聞き取りやすいトップノートを拾っていくと3rdが含まれているところがある。結局ラスト以外は全部3和音で拾った。ラストは明確にパワーコードで、暗さがなく力強さが印象に残る。(試しに3rdを入れると明確に違うのが分かる。)

Bs

Gtの低域がぶつかってて聞き取りがムズい。Gtに動かれたら死ぬ。サビ8小節目は聞き取れないので4小節目をコピった。

Pad

シンプルな音なのになかなか近い音源が見つからず、ちょろっと誤魔化した。

Intro / Outro

イントロのラスト〜間奏やアウトロでは、ピアノに4分のdelayがかかっている。

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ピアノのdelay

反省点

  • サビのPadの音を誤魔化した。Logicのプリセットを聴き込む会を設けましょう。
  • Introのクレッシェンドする部分でFXが鳴っているが拾わなかった。シンセを学ぶなりFXの探し方を学ぶなりしましょう。
  • ギターの奏法を勉強しようと思って5億年経過した。奏法を学んだ上でそれらが実現出来る音源を買うと良いかもしれない。
  • 前回の『お勉強しといてよ』耳コピに28時間掛かりましたが、今回はこのblogの下書きメモ的なものを書きながら18.3時間に収めることが出来ました。これはかなり進歩! 最終的には5-6時間で作れるようになりたい。

感想

耳コピを通じてこの曲がめちゃくちゃ好きになりました。

葛藤を抱えながらもまっすぐ進もうとするせつ菜ちゃんの力強さを感じさせられるボーカルやサウンドにすっかり惚れてしまいました。ライブで聴きてえ!!!

ちなみに虹ヶ咲学園の推しは璃奈ちゃんボードです。

*1:厳密には11月に『リテラチュア』のサビ〜アウトロだけ耳コピしていたのですが、クオリティに納得が行かなかったのでワンコーラスの耳コピは諦めました