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東大卒アスペ傾向Web系エンジニアの人生戦略

ファッションメンヘラITエンジニアの人生戦略

先日『ITエンジニアのための「人生戦略」の教科書』という本を読みました。自称ファッションメンヘラITエンジニアの私としては共感する部分もありつつ過半は「これは私には適用出来そうにない」という感想を抱きました。それを踏まえて、それなら私のような人間はどんな人生戦略を練ればよいのかについて、この本の感想文を書きがてら考えてみようと思います。

最初に軽く私の状況を説明しておくと、典型的な東大卒アスペルガー疑いです*1。自律神経失調気味で、8時間x5日のフルタイム労働を(残業は数十分程度に過ぎませんが)常にギリギリでこなしているような状況です。8時間睡眠でも熟眠感がなく、2年前から過敏性腸症候群らしき症状があります。低気圧が来ると決まって頭痛に襲われ、最近は週末頭痛も時折起こるようになりました。心療内科に月1で通い、全身の緊張を軽減するためごく軽めの薬を2年近く服用しています。

世の中の自己啓発書は健常者を前提に書かれている

まず最初にはっきりと断っておきたい点として、世の中の自己啓発書は読者が健常者であることを前提に書かれている ということを言っておきたいと思います。

例えばホリエモン。氏の著作は数冊読むとどれも同じようなことが書いてあることが分かるのですが、要は「自分の好きなことに熱中しろ」ということを一貫して主張しています。しかし私のような幼少期から「長男&小学受験&神童扱い」と他己評価漬けで生きてきた人間には今更自分のやりたいことなんて分かりません。自分で自分を愛するということを幼少期に学ぶ機会を逸してしまい、周りから褒められることでしか承認欲求を満たすことが出来ないのです。そもそもメンタルに根深い問題があるので、いくらホリエモンの本を読んだところで「なるほど、健常者はそうなんだな」という理解が得られるに過ぎません。

また、今回取り上げる本書でも、著者は比較的ブラック寄りな考え方が見え隠れします。

私は、死ぬほど仕事をしても実際に死ぬことはほとんどないだろうと思っている。 (p.58)

これは私のような8時間フルタイム労働ですらやっとの思いでこなしているような人間には到底現実的ではありません。というかこれ、完全に一昔前のワタミやんけ。ITエンジニア向けの本なんだからもう少しロジカルなものを期待していたのに残念です。

別にビジネスで成功したいと思ってない

本書では一貫して「ITエンジニアがビジネス的に成功するには」という問題に対する著者なりの現実的かつ具体的なアプローチが語られています。ところがそもそも私は別にビジネスで成功したいと思っていません。 私は趣味を充実させていくための生活の基盤として仕事をしているというのが8割で、仕事自体を目的と捉えて人生を充実させる成分は2割程度と捉えています。そもそも仕事で成功することだけが人生戦略じゃないですよね。

もちろん仕事は精一杯、本来の実力以上の力で向き合っており(でないとチームで求められる水準に達せないので)、その代償として土日に大量の睡眠を必要とするような状況になっているほどです。その中でも趣味を充実させたいので、限られた体力と時間を何とか工面して生活しています。

本書における成功モデルは4ステップに分かれています。最初は本業+受託開発の副業に始まり、最終的には自分のサービスだけで食べていけるようにするというものです。まずこの第1ステップである「副業」というのがもう無理です。そもそも8時間×5日で精一杯なのに、それに加えて責任ある仕事を増やすなんてとても考えられません。

それに下請けは個人的に良い思い出がありません。大昔アルバイトで下請けをやっていた時期がありましたが、自分が良さを感じられないアプリやサービスを作るのは決して面白くありませんし、プロジェクトが炎上してトラブルになったりと非常に厳しい世界でした。当時の経験から自分が納得したサービスを作るために自社サービスの会社に就職して満足しているので、今となっては貴重な経験だったと思います。

そういうわけなので、私は内容的にも体力的にも副業で受託開発は避けたく、せいぜい技術書を読んで自己研鑽するのが関の山です。逆に言うと技術書を読むのは有効であり、かつ必須と考えています。これが私の人生戦略その①です。

人生戦略① 技術書を読み、最高の効率で技術力を向上させる

私の場合、副業をこなす体力はありませんし、その体力があるなら趣味に振り向けたいと考えています。ですが一方で新卒4年目を迎え未だに技術力が足りないことを日々痛感しています。この3年間、全く自己研鑽をしてこなかったわけではありませんが、周囲の新卒が学生時代からバリバリやってきている中、私はあまり本格的な・最先端のプログラミングの経験もなく入社しており、入社時から差がついているにもかかわらず、その差を埋めようとする(業務時間外の)努力は正直なところ十分でなかったというのが自己評価です。

ですが私は腐っても東大卒。資格取得が趣味でもあります。勉強することには並大抵の人よりは慣れているという自負があります。仕事というアウトプットを前提とする勉強にシフトすることを意識する必要はあるものの、技術書を読んで学習するという形をとることで、プログラミングをある程度自分の得意分野に持ち込むことが出来る可能性があります。

ビジネスで成功するとかしないとか以前に、今いる会社で価値発揮出来ることが大前提です。でなければ食べていけませんし、趣味もおぼつきません。なので私はその最低ラインを確保し、安心かつ安定して稼げるようになるために勉強をする必要があります。ただし求めるラインは独立開業を目指す人と比べれば高くありません。日々の仕事を問題なくこなせれば良いので、せいぜい転職市場で年収600万程度の値がつくレベルになれればそれ以上を目指す必要は全く無いと考えています。

今の部署で言えば、PHP, Rails, Python, Go言語で問題なくコードが書けて、Kubernetesの運用管理の基本が出来る程度で十分です。あとはテスト駆動開発やら見積もり手法やらスクラムやらを必要に応じてかじっておけば良いでしょう。恐らく技術書を20冊も咀嚼出来れば、あとは仕事を続ける中で十分身につけることが可能と考えています。確かに私は体力に自信がありませんが、それでも昨年度実績で趣味の通訳案内士の勉強に年間200時間以上費やすことが出来ました。それを全て技術書を読む時間に充てれば、1年から1年半もあれば学ぶべき内容はひととおりマスター出来るでしょう。

人生戦略② 「遊びの時代」に備え、自己実現に向けて趣味に取り組む

私の考えでは――もとい、願望を多分に含むのですが――今後AIが市場に浸透するにつれ、定型業務がどんどん人の手から奪われていった結果、新たなビジネスを創造することや、イラスト制作等のクリエイティブな仕事しか人間には残されなくなってくると思っています。非常に高度で誰でも出来る仕事ではありませんから、当然仕事にあぶれる人が増えます。となると治安維持のためにベーシックインカム導入が必要になる。

最終的に仕事は「数ある自己実現の手段の一つ」に成り下がる可能性があると考えています。そんなAI時代には仕事が出来る・出来ないというのは人生の充実度を示す尺度としての力をだんだん失っていくのではないでしょうか。もっと広い視野で自己実現の手段を見つけておくことが重要で、絵を描くとか走るとか音ゲーするとか、何でもいいので熱中できることを見つけることが人生の質を大きく左右する、そんな「遊びの時代」が到来するように思います。

孫さんはじめ多くの著名人が「人間の仕事は無くなっていく」と言及していますし*2、シンギュラリティを待たずとも、既に世の中には専ら資本主義の歯車を回すためだけに存在する仕事が溢れています。昨今の情勢からリモートワークが定着しつつありますが、それをきっかけに奇しくも「実は要らなかった仕事」が浮き彫りになっているように感じます。その意味ではコロナは文明の進歩を5年10年早めてしまったかもしれません。

こうした思想のもとに生きているので、仕事を減らすための仕事か、「遊びの時代」を盛り上げる労働しかしたくないと常日頃から思っています。

キャリアで成功する以外の自己実現についてもっと語られるべきではないでしょうか? まもなくAIに取って代わられBIの時代がやってくる。そうなったら人生における自己実現の手段は一気に広がる。その時に備えて趣味に没頭する能力を身に着けておくのが真の生存戦略ではないかと思うのです。

とはいえすぐにそんな時代に0→1で切り替わるわけではありません。過渡期はしばらく続くでしょう。私はそんなに強気になれないので、食べていくことの心配をしながらではじっくり趣味に取り組むことは出来ないと思っています。「脱サラして趣味に生きる!」とかはちょっと無理です。なので私は仕事をしながら趣味を並行しています*3

今はまだ仕事のスキルが未熟なのでエネルギーの大半を仕事に回さねばなりませんし、独学でスキルアップも必要だと考えていますが、ある程度スキルを貯金したら徐々に仕事に割いていた体力を趣味に回せるようになってくると思います。そのため短期目線ではいかに早く技術力をつけるかが勝負だと考えています。

総括

本書は以前から読みたい本としてAmazonウィッシュリストにも入れておいたのですが、最近見てみたらkindle unlimitedに入っていたので早速一気読みしました。内容は正直自分にとっては直接参考になるものではありませんでしたが、順当にITエンジニアがビジネスにおいて成功するための現実的かつ具体的なステップを説明している本としては稀有な存在であり、読む価値のある一冊だと思います。私自身も「こういう考えの人も居るんだな」と一歩離れた場所から眺めつつ、では自分はどうすればいい? と再考するきっかけに出来たので悪くない時間の使い方でした。そして技術書読書強化期間の1冊目を飾る本にもなりました(これが技術書かというと微妙なところではありますが)。

冒頭でも述べた通り、巷の自己啓発書は健常者向けに書かれています。健常者でない人はその自覚をもち、「一般的な自己啓発書の内容は自分にそのまま当てはめられるとは限らない」という事実に気づくことが重要です。でないと「俺は自己啓発書を読むだけで満足して終わるダメな奴なんだ」となってしまいます。貴方に必要なのは客観視であり、人によっては精神科や心療内科に通うことです。

巷にはこれだけ自己啓発本が氾濫しているのに、体力がないとか、発達障害を抱えている人の生存戦略について書かれた本があまりにも無さすぎると感じています。大人の発達障害うつ病に対して社会が寛容になりつつある昨今、そろそろそういった流れが来ても良いんじゃないかと思っていますが、如何でしょうか。

*1:アスペルガー症候群の真実…東大など高学歴な人に多い説は本当か?専門家が解説 https://biz-journal.jp/2017/03/post_18344.html

*2:https://business.nikkei.com/atcl/report/15/252773/030600034/

*3:前半で「熱中できることが分からない」と言っておきながらこいつは何を言っているんだと思われるかもしれませんが、すごく雑に言ってしまえば「どれも大してやる気ないけど、一番マシだと感じること」をやっているに過ぎません。この辺りの話は今回の本筋ではないのでこれ以上は割愛します